今回はあと1か月ほどで迎える2021年新年を前に、2020年度の個人所得税の情報をいくつかお伝えしたいと思います。まずは、どなたでも知っているべき基本事項から。
1. 基本控除額 (Standard Deductions) の変更
a. MFJ (Married Filing Jointly夫婦合同申告) では、$24,800で、去年より$400アップ。
b. S(Single独身者)及びMFS (Married Filing Separately 夫婦別個申告) は、$12,400 で、 $200アップ。
c. HH (Head of Household 家長申告)は、$18,650で、$300アップ。
d. 65歳以上、或いは盲目者の追加控除額は、夫婦の場合一人あたり$1,300。独身者の場合には$1,650 となります。
e. 子供など扶養家族員 (Dependent) の基本控除最高額は、$1,100或いは$350+Earned Income (給与収入) のどちらか高い方の額で、上記基本控除額を超えない額。
2. 人的控除額 (Personal Exemption) は、引き続き$0 です。これはTax Cuts and Jobs Actにより設定されました。
3. 項目別控除額 (Schedule A、 Itemized Deductions) ですが、2018年度、2019年度と同様、控除額に上限がありません。収入額による項目別控除額の制限はTax Cuts and Jobs Actによって廃止されました。ただし、医療経費はAGI (調整総合収入) の7.5%を超える額のみが控除、消費税なども含む納税額控除額は最高1万ドルまでとされ、更にモーゲッジ利子控除はモーゲッジの額が$750,000まで、社員として支払ったビジネス経費は控除できない等と、他の制限が加えられています。
次に個別事項に関しての情報です。
4. HSA (Health Savings Account) 個人負担の額が多いHSA健康保険の条件。個人保険の場合、HSA医療保険の年間deductible額は$2,350から$3,550以内であること。自費で支払う医療費は$4,750までという制限があります。家族保険の場合、HSA医療保険の年間deductible額は$4,750から$7,100以内であること。自費で支払う医療費は$8,650までという制限があります。
5. Lifetime Learning Credit(学費クレジット)は高卒資格を必要とする大学或いは専門学校の学費に関する税クレジットですが、これは学位を取る事を控除の条件としていません。しかし、 AGI (Adjusted Gross Income調整総合収入額) によって制限があり、AGIが夫婦合同申告では$118,000、独身者申告では$59,000以上の場合には、このクレジットが使えません。2019年度では、夫婦合同申告の場合、AGI額が$116,000が閾値でした。
6. Standard Mileage (車の基本マイル控除額) が、ビジネスの場合、1マイルにつき、57.5 セントとなりました。去年の58 セントから下がっておりますので気を付けましょう。このマイレージ額は、年度内に変更する事もありますので、注意しましょう。
7. Form 2555 (Foreign Earned Income Exclusion) 外国で生活して収入を得ている方の外国収入の最高控除額が変更しました。一人につき、$107,600までです。ご夫婦の場合には、各自が$107,600までの外国での収入を控除する事ができます。この額以上の収入があった場合には、通常Form 1116 (外国税クレジット) を使って、控除できなかった部分を報告し、アメリカの所得税額を減らす事ができます。
8. 贈与税 (Gift Tax) の控除額は2020年度も同じ、$15,000です。通常夫婦の間での資産の贈与には税金がかかりませんが、配偶者がアメリカ市民でない場合には、年間$157,000 まで贈与できるという制限が加えられています。特にグリーンカード保持者は、この事を見逃すケースが多いので気を付けましょう。
9. 遺産相続税 (Estate Tax) は、2020年度は、資産総額が$11,580,000まで、相続税がかかりません。しかし市民権を持たない場合にはこの額が大幅に変更しますので、トラストなどを設置するなどの対策を練りましょう。
10. 外国からの贈与。外国から受け取ったギフト額が$16,649を超えますと報告義務が生じます。これは2020年度の新しい法律のようですので、詳しくは、またの機会に調べて報告いたします。
11. EIC (Earned Income Credit 仕事による収入に対するクレジット) の最高給付額は毎年変更しますが、EICに関して覚えておかねばならない事は、レンタル収入や投資収入等の受け身の収入 (Passive Income) が総計$3,650以上ありますとこのクレジットが貰えない事です。クライアントで、レンタル収入がこの額よりほんの数ドル多くあったため、$5,000にも及ぶEICを受け取れなかったケース、また生活が苦しく、投資信託を売った額の利益額(キャピタルゲイン)がほんの数ドル多かった為に、やはり数千ドルのEICを受け取れなかったケースがあります。EICの給付を頼りになさっている方、利子や投資収入やレンタル収入の総額が、$3,650を超えないよう、くれぐれも気を付けましょう。
12. 特別養子経費クレジットは、経費額$14,300まで、去年は$14,080が最高額でした。
13. QBI (Qualified Business Income) Deductions 個人事業収入などの一部を控除して減税できるのがQBI控除です。このQBI控除は、夫婦合同申告をした場合には$326,600以上の収入、独身または夫婦別個申告した場合には、$163,300以上の収入があった場合にはできませんので、比較的高収入の個人営業者の方は注意しましょう。
14. Long-Term Care Insurance (介護保険) 料金は、項目別控除上の医療経費として控除の対象となりますが、控除できる額が年齢によって、制限があります。医療経費として控除できる額を表にしました。
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