今回は、アリゾナ州の個人所得税申告に関して、国税法との違いも鑑みて、特有点、注目点をいくつか述べてみたいと思います。なお情報は全て2020年度所得税申告をベースにしておりますので、ご了解ください。
扶養家族員でも(子供でも)フルに基本控除(Standard Deduction)が取れる。
国税局の所得税申告では、被扶養家族員の基本控除額の計算は、(所得収入+$350) または 基本控除額($12,400)のどちらか低い額となっていますが、アリゾナ州所得税上では、年齢や扶養家族員のいかんにかかわらず、一律$12,400の基本控除を使う事ができます。例えば、17歳の子供に$6,000のアルバイト所得と$1,000の投資収入があったとしますと、国税上では、$6,350が基本控除であるので、課税対象収入が$650($7,000-$6,350)となり、納税義務が生じるのに対して、アリゾナ州の所得税上では、$12,400 の基本控除をそのまま取る事ができますので、課税対象収入は$0 ($7,000―$12,400)となり、納税義務はありません。
特別の扶養家族控除がある。
生活の補助が必要な、父か母、または祖父か祖母を自宅に引き取り介護している場合には、国税所得税申告書上で、扶養家族員として申請する事ができるのみならず、アリゾナ州の所得税申告書では、状況によっては、要介護扶養家族員一人につき$10,000の人的控除を申請する事ができます。これは通常要介護と言われる、生活に必要な機能が何点か欠けるお年寄りを家で介護している場合に適応されます。
項目別控除(Itemized Deduction Schedule A)を使った場合、アリゾナ州税法では、医療関係経費が全額、項目別控除額に含める事ができる。
通常国税上では、調整総合収入(AGI – Adjusted Gross Income)の7.5%を上回った医療経費額のみが項目別控除の額に含まれます。例えば、医療関連経費の合計が$6,100あったとします。W2の所得額が$80,000でそれがAGIであったとしますと、項目別控除で取れる医療関係経費額は、$100 ($6,100 - $80,000x0.075)しかありませんが、アリゾナ州税申告では、全額の$6,100を経費として項目別控除額に含める事ができます。
国債利子収入の控除がある。
アメリカの国債券などからの利子収入や、更にアリゾナ州のボンド(債券)などからの収入はアリゾナでは課税対象となりません。Mutual Fund (投資信託)などをお持ちの方、1099-DIV等に報告されているTax Exempt Income (非課税収入)に含まれるどの額がアリゾナ州からの収入なのか、そしてMoney Market Fundなどの収入の国債に関連する収入額などを、ステートメントから拾ってきちんと報告しませんと、損をすることがありますので、気を付けましょう。
減価償却額が違う事がある。
個人ビジネスで使用する資産に関して、国税とアリゾナ州税の減価償却の扱い方が違います。近年アリゾナ州も国税法に合わせた減価償却法を施行し始めましたが、過去に設定した減価償却はそのまま償却期間が終了するまで(数年にわたって)使われますので、アリゾナ州税で減価償却額の調整が行われますので気を付けましょう。
国税とは違う長期投資キャピタルゲインの控除方法がある。
国税では、長期(一年以上)保持された資産を売却し、キャピタルゲイン(利益)が’生じた場合には、特別の低率の税額が課せられますが、アリゾナ州にはこの法律はなく、その代わり2011年以降(2012年1月1日から)に購入した資産を売却してキャピタルゲイン(利益)が’生じた場合には、その利益額の25%を収入から控除する事ができます。例えば、$100,000の収入のある独身者が、2015年に購入した$7,000の物件を2020年に$9,000で売却したとします。この場合、$2,000の長期キャピタルゲイン(利益)が生じ、国税申告書上では、通常税率24%ではなく、特別の15%の税金が課せられます。アリゾナ所得税上では、この$2,000を22欄で報告し、25%の$500 を差し引いた$1,500が州の課税対象収入となります。このケースの場合、アリゾナ税率は4.17%で計算となります。
529 College Savings Planへの投資額の控除がある。
独身者では年間$2,000まで、夫婦合同申告者は$4,000まで、課税対象収入に対する控除があります。お子さんやお孫さんの将来の学費の為に積み立てる良い機会かもしれません。
州や市のペンション収入の控除がある。
アメリカ政府、アリゾナ州、或いはアリゾナの市などから年金 (1099-R) を受領している場合には、各個人につき、年間$2500まで、収入から控除する事ができます。
軍事関係のペンション収入の控除がある。
アメリカの軍隊に従事した結果受領する年金(1099-R)に関しては、各個人につき、年間$3,000まで、収入から控除する事ができます。
Social Security Benefits は課税対象収入ではない。
国税上では社会保障年金の85%まで、収入として報告しなければならない場合(総合収入によって課税対象額が変更します)がありますが、アリゾナ州所得税申告書上では、Social Security Benefitは全額控除となります。知らないと損します。覚えておきましょう。
慈善事業寄付控除がある。
これは最近の州税法ですが、アリゾナ州では、項目別控除に含める事のできる慈善事業寄付総額の25%を、課税対象収入から控除する事ができます。例えば、項目別控除上で、計$2,400 の慈善事業寄付を計上できたとします。もし項目別控除総額が十分にないため、基本控除を使ったとしましても、アリゾナ州税上では、この25% の$600を課税対象収入から控除する事ができます。慈善事業寄付に関する情報やレシートはいつもきちんと保管しておきましょう。
AZ タックスクレジットは納税額をそのまま減らしてくれる。
すでにかなりの方がArizona Tax Creditを使って納税額を減らしていますが、このクレジットは ”$ for $” (一ドルにつき一ドル)税額その物を減らしてくれる為、減税節税対策のみならず、罰金対策にも有用されています。一番よく使用されるクレジットは以下の4種でしょう。寄付の条件、クレジットの上限額、登録されている機関の情報など、詳細はアリゾナ州税局のウェッブサイト (azdor.gov) から検索ください。
a. Form 321 Contributions to Charities (クレジット登録されている一般慈善事業団体への寄付)
b. Form 322 Fees Paid to Public Schools (公立学校などへの寄付)
c. Form 323, Form 348 School Tuition Organization (私立学校などへの寄付)
d. Form 352 Contributions to Foster Care Charities (養護施設などへの寄付)
Form 309 Tax Paid to Another State他州や他国に払った税額に対するクレジット。
同じ収入に関して、他州或いは他国で課税されて、二重に所得税を支払った場合には、外国に払った税、他州に支払った所得税の一部あるいは全額をアリゾナ州納税額から差し引いてもらう事が通常はできます。上記及びこのクレジットは、十分な納税額がなく、クレジット額の方が納税額より多かった場合には、その余剰額を将来に繰り越す事ができます。
アリゾナ州の所得税申告書上には、自発的贈与(Voluntary Gifts) という項目がある。
この項目に寄付金額を書き入れ、所得税に足して支払う、或いは還付金額から差し引いて支払う事ができます。このギフト項目には、Arizona Wildlife Fund, Child Abuse prevention, Domestic Violence Services, Political Gift, Special Olympics, Veterans Donation Fundなど色々並べられていますが、その中でも一番興味深いのは、I Didn’t Pay Enough Fundです。これは個人がアリゾナ州に十分に納税していないので、もっと納税したい場合に、額を書き入れて払い込むという物です。アリゾナ州税局の方の話では、もっと税金を払いたいという人は結構いるようで、ここ10年ほどこの項目は続いています。貴方はアリゾナ州に十分所得税を支払っていると思いますか?思いませんか?(笑)アメリカらしい申告書ですね。
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