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  • Writer's pictureSumiko Glenn

贈与税について

年末も近づいてきましたね。今回はこのシーズンにちなんで、アメリカのGift Tax(贈与税)に関して、お話したいと思います。


Annual Exclusion(年間贈与税控除上限金額)

2021年度の贈与税控除の年間上限金額は、$15,000です。この贈与税控除上限金額の範囲内であれば、特に贈与について申告する必要はありません。ここで一つ重要なのは、この上限額は、贈与者及び受け取り人各一人につき適用される額だという事です。例えば、私は今年、友人15人全員に対し一人につき$15,000、つまり総額$225,000を贈与税申告をせずに贈与する事ができます。私と主人は、二人いる娘に、一人につき$30,000 (私から$15,000、主人から$15,000) づつ、娘婿にも$30,000、計$90,000まで、贈与税申告をせずに贈与する事ができるというわけです。


配偶者、または慈善団体以外の受取人に対し、この年間贈与控除金額以上の贈与をした場合には、贈与税申告(Gift Tax Return-Form 709)を申告する必要が出てきます。このForm 709を申告することで、贈与者が一生涯で受けられる贈与税控除上限額、つまり遺産相続控除額(2021年度は、$11,700,000ですが、2022年度からはかなり下がる可能性があります)から、Form 709で申告した今年度分の贈与額が差し引かれることになります。


一般に生涯贈与税控除上限額(遺産相続控除額)である$11,700,000を超えていなければ、贈与税や相続税を払う必要はありません。例えば、今ご自分が住んでおられる家や資産を、娘さんに贈与したい、とします。家の時価(Fair Market Value)が、$250,000で、それ以外にも贈与したい資産が$175,000ほどあったとします。この場合、この贈与の合計金額は、$425,000ですので、年間贈与税控除上限の$15,000を超えているので、Form 709を申告する必要はありますが、これまでの総合贈与報告額が生涯贈与税控除上限額は超えていなければ、今年度は、Form 709を申告するだけで、贈与税を支払う義務は生じません。


遺産相続税を計算するにあたり、生涯に渡ってForm 709に報告した総合贈与額が、資産に含まれるため、上記の例の場合には、残る遺産に関して$11,700,000 - $425,000=$11,275,000の額が控除されて、相続税が計算されることになるわけです。


通常、夫婦がアメリカ市民であった場合には、無制限の資産をいつでも互いに譲渡する事ができますが、受け取る側がアメリカ市民でなく、グリーンカード保持者(永住者)または非居住者(Non Resident Alien)の配偶者であった場合には、アメリカ市民の配偶者であるにも関わらず、ギフト総額が年間$159,000(2020年度)を超えている場合には、Form 709贈与税申告をする義務が生じますので注意しましょう。


Present Interest(贈与された現時点での利権)

この年間贈与税控除を受けるには、贈与が将来的な利権ではなく、贈与された現時点での利権である必要があります。例えば、長男と長女が入っている取消不能トラスト (Irrevocable Trust)に、ご自身が現在お持ちの証券(時価$100,000)を譲渡したとします。トラスト契約に基づくと、「長男はトラストから得られる収入を一生に渡って受け取ることができる。長女は、長男が死亡した時に証券を受け取ることができる。」ということになっていたとします。この場合、長男は証券がトラストに移転された時点で、その利益を得ることができるので、Present Interestがあるとされ、贈与税申告をして、年間贈与税控除を適用する事になりますが、長女の場合は、証券のトラストへの移転時点では将来的な利権 (Future Interest) しかないので、贈与税申告はされず、長男が死亡した時点で、長女に贈与される為、長男の遺産相続内の資産として扱われる事になります。


時価以下の値段での売買

所有財産の一部を売り、一部を贈与する、という形で譲渡することも可能です。

例えば、修正コスト額(Adjusted Basis税法上のコスト)$50,000で、時価 (Fair Market Value)$200,000のキャビンを所有しているとします。このキャビンを、息子に$55,000で売ったとします。その場合、ご自身としては、$5,000のキャピタルゲインをForm 1040の確定申告で申告し、$145,000を贈与としてForm 709で、申告することになります。息子さんのキャビン購入修正コスト額は、$55,000が税法上の初期価値となります。よって、息子がこのキャビンを5年後に$250,000で売却した場合には、$195,000のキャピタルゲインが発生し、この額に対して所得税を支払う事になります。


では、もし息子がこのキャビンを購入せず、5年後に$250,000の市場価値のある資産(ステップアップベース)として、遺産相続で受け取ったとします。この場合、キャビンは遺産相続資産に含まれますので、総合資産が贈与税控除上限額(2021年度は、$11,700,000)を超えなければ、遺産相続税なしで、そのまま相続となります。このキャビンをすぐに$250,000売却したとしますと、$250,000の資産を$250,000で売却したので、キャピタルゲインはゼロとなり、税金を支払う必要もなくなります。ですから、生前に不動産などを贈与する前に、将来の使用目的や売却のタイミングなどを考慮してから決定する事をお勧めいたします。


学費と医療費の支払い

贈与税は、動産、不動産にかかわらず、有形資産、無形資産にかかわらず、直接的、間接的にかかわらず、トラストやその他の手段にかかわらず、受贈者(贈与を受ける者)への譲渡のすべてに適用されます。贈与には、第三者に対する現金、動産、負債や費用の支払いなども含まれますが、贈与税から控除される譲渡もあります。学費と医療費の支払いが、直接学校や医療機関に支払われた場合には、贈与から除外され、Form 709に申告する必要がありません。ここで注意しなくてはいけないのが、贈与者が「直接」に学校や医療機関に支払う、という点です。例えば、お孫さんの学費の支払いのために、お孫さんの口座にお金を振り込んでしまった場合は、たとえその全額をお孫さんが学費の支払いにすぐに使ったとしても、それは贈与になってしまいますので気を付けましょう。


お子さんの学費預金ができる529 Plan を設置した場合、2021年度の贈与税控除の年間上限金額の$15,000 から計算しますと、例えばご夫婦で、子供一人につき、毎年$30,000まで贈与する事ができます。もっと多くの学費贈与をしたい場合には、Superfunding(スーパーファンディング)といいまして、5倍の額、個人で$75,000、夫婦で$150,000までの額を、贈与税を払わずに贈与する事ができます。これは529プランにのみ適用される贈与税の特例でして、Form 709に申告する必要が生じますが、一遍に支払っても総額を5年に渡って贈与した事にする、という解釈で遺産相続控除額から差し引かれる事を免れます。ただし (1) 贈与をした者が5年以内に死亡した場合には、一部が遺産相続税の対象となる資産に含まれてしまう事、(2) 5年に渡って毎年Form 709を提出しなければならない事(何も贈与しなくてもその年の贈与額を報告)が不便な点だと言えましょう。先にも述べましたように、このギフトは個々別々に計算されるため、例えば夫婦、祖父母、親戚夫婦それぞれが同じ529プランに、各$150,000、計$450,000を、夫々の遺産相続控除額に影響を与えずに、一度に贈与する事が可能です。


ローン(融資)と贈与

個人が融資を受けて、その支払いが免除された場合も贈与とみなされます。その融資が、最初から免除される予定になっていた融資の場合、その融資をした時点で贈与があった、とみなされます。融資をした時点では、返してもらうつもりだったが、結局あとで、免除することになった、という場合には、その融資が免除になった時点で贈与があった、とみなされます。

また、融資の利率が、連邦法定利率(AFR)よりも少ない場合には「正当なローン契約」とはみなされない為、利子も貸主からの贈与とみなされ、さらに、その利子は、貸主の課税対象収入とみなされます。ただし、借主と貸主が、両方とも個人で、貸し付け残高が$10,000以下の場合、過去の利子は贈与税の対象にはならず、利子が貸主の課税対象収入とみなされることもありません。



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